
【EDD参加者インタビュー】言葉にできない“気分”を、もし音楽で伝えられたら
チームSUEYASU末安さん
EFCが主催する開発コンテスト「Engineer Driven Day(EDD)2024」に一人で参加し、制作したアプリでEngineer Driven Day特別賞を受賞した末安さん。メンターのみならず生成AIにまで密に相談しながら、初めてのプロダクト開発を成功させました。
末安さんが開発した音楽プレイリスト作成アプリ「Your_Tempo」は、画面をタップする速度からその時のユーザーの気分を読み取り、ぴったりの音楽をリスト化するというもの。そのユニークな発想はどこから生まれたのか、そしてEDDへの参加で何を得たのか。初めてのことだらけだったというチャレンジの全貌を、伺いました。
感情を言葉にしづらい人の、その日の“気分”を知りたい
本日はよろしくお願いします。まずは、EDD参加に至るまでの経緯を教えてください。
出産を機に、それまで勤めていた会社を退職し、勉強して社会福祉士の資格を取りました。念願だった福祉の仕事に就けたものの、働くうちに「福祉士として現場に立つより、福祉士を支援する側に回りたい」と考えるようになりました。というのも、事務処理などが煩雑で、本来の対人支援に十分な時間を割けない状況を目にしたからです。
そこで職業訓練の機会を活用してWebデザインなどを学び、「困りごとを解決したい」という想いのもと、デジタルでの支援に取り組もうと決めました。自分の作ったもので誰かの役に立てたら、と思ったんです。ただ、独学でPHPやJavaなどを学んでも、形として残さないと経験にも評価にもつながりません。そんなときに、初心者でも参加できる開発イベントを探していて出会ったのが、EDDでした。
アプリ「Your_Tempo」のアイデアはどこから来たのですか?
福祉の現場では、気持ちを言葉にするのが得意でない方とのコミュニケーションの難しさを痛感していました。感情をうまく伝えられないケースも多く、「今日はどんな気分なのか」がわかりづらいのです。「言語が通じなくても、気持ちが伝わる方法があればいいのに」と何度も思いました。
そこで、たとえば音楽なら気分を伝えられるんじゃないかと考えたのが、アイデアの原点です。自分の気分を言葉で入力するのではなく、非言語のままSpotifyに伝えることで、今の気分に合った音楽を自動で選んでもらえたら――。最初はApple Watchから心拍データを取得して選曲する仕組みを目指したのですが、技術的に難しかったため、スマホ 画面のタップ速度で気分を表現する方法に切り替えました。
ChatGPTと一緒にプログラム開発
EDDに参加して、どんなことを感じましたか?
最初は「初心者の私が参加して大丈夫かな……」と不安でしたが、イベントとして、とても楽しめました。普段は出会えない人たちと交流でき、事務局の方々のサポートもあって、安心して取り組めましたね。メンタリングではプロの方々からたくさんのヒントをいただき、「そんな発想はなかった!」と驚くことばかり。エンジニアの方って「どうやったらできるか」を常に考えているんだなと、すごく刺激を受けました。

EDDで自作アプリ「Your_Tempo」を紹介中

表彰イベントで「Your_Tempo」をプレゼン中
開発には生成AIも活用されたとか。
はい、プログラム開発はまったくの初心者だったので、何をどう進めればよいかもわからず、ChatGPTに相談しました。「このスケジュールで私はいつまでに何をすべき?」と聞いたり、プロンプトの勉強会に参加してAIとのやり取りに慣れていったり。今では、庭の手入れについてもChatGPTに相談するくらい、頼りにしています(笑)。
緊張する母親の姿も、見てほしい
開発において特に苦労したことは何ですか?
やはり、プログラミング初心者なので技術面での苦労が大きかったです。加えて、作業時間の確保にも工夫が必要でした。ちょうど子どもの夏休みと重なっていたので、午前中に子どもが宿題をしている時間を自分の作業時間にあてて、集中しました。
プレゼン当日には子ども と夫にも来てもらいました。緊張でガチガチの母親の姿を見る機会なんて滅多にないと思うので、「お母さんだって失敗するし、緊張するんだよ」と伝えるいい機会になったかもしれません(笑)。
それはとても大切なことですね! EDDへの参加を通じて得られたのはどんなことでしょうか?
「自信がなくても、まず行動してみればなんとかなる」という実感ですね。それまでの私は、少し怖がりすぎていたかもしれません。手を動かして形にしてみること。他の参加者のアイデアに触れて視野を広げること。一歩踏み出したからこそ得られた学びがたくさんありました。参加して本当によかったです。
では最後に、今後のご自身の計画について教えてください。
福祉分野でのDXに貢献したいという気持ちは変わりませんが、学ぶこと自体が好きなので、分野にとらわれず自分の興味あることに注力していきたいですね。今は英語や中国語を勉強するなど、プログラミングと関係のないことにもチャレンジしています。AIへの興味もますます高まっていますし。
私が社会人になった頃は、インターネットの黎明期で、世の中が一気に変わっていくのを目の当たりにしました。私自身も時代に合わせて柔軟に変化しながら、自分のできることに取り組んでいきたいと思っています。
今後のご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
※末安さんが開発した音楽プレイリスト作成アプリ「Your_Tempo」の詳細は以下のページをご覧ください。
https://protopedia.net/prototype/5847