INTERVIEW

コミュニティとオープンソースがエンジニアを育てる

キャッチアップ株式会社江頭竜二さん

公開日:2019.5.27

今回のインタビューはキャッチアップ株式会社の江頭竜二さんです。

福岡のコミュニティに対する思いを聞かせていただきました!

 

江頭さんは、最初はエンジニアではない他の業種に就職されたそうですね。

 そうです。もともと僕は専門学校を卒業して銀行に入ったんですけど、全然馬が合わなくて、4か月で辞めちゃったんです。

それで、車が好きで、ガソリンスタンドに入社して6年間位、副店長になるとこまでいって、当時26歳位でこれからは手に職つけたいな、ということで職業訓練所に通ったら、その中の「ホームページ」っていうのがとても魅力的だったんです。

それで、僕は「こっからホームページで生きていくんだ」と決めて、独学を死ぬほどやってですね。まずはWeb制作会社ではなくて、コールセンター代行業をやってる会社があって、そこになんとか拾ってもらって。でも、そこでやることはもちろんホームページではなかったんですね。

そこではコールセンターのスーパーバイザーをやってたんですが、僕がやっぱりパソコンに興味が出ていた時期だったので、そっちよりの仕事を能動的にやっていって、だんだんと僕の仕事がシステムに移っていったんですよ。

それで、最終的にエンジニアの仕事しか…ぼく、ワガママなんで、やりたくないから(笑) 、このままスーパーバイザーとシステムエンジニアの両方やるとなると、両方を続ける自信がないから辞めますって会社に直訴したんです。
そうすると、その会社の部長さんがいい人で、「会社はそんなに社員のことを簡単に思ってないわよ。あなたがそれだけやりたいんだったらそういう部署を作りなさい」 って言われて、それでシステム部を作ったんです。


 

当時江頭さんがエンジニアとしてスキルアップを図るときどういった方法を?

  もうとにかく、死ぬほど本読みました。  読んでそのプログラムを書いて。
その時はサラリーマンの時に、ちょっとの寝る間も削ってやってたって感じですね。いろいろ勉強したんですけど、当時はクライアントや上司から迫られたものを提供しないといけなかったので、それを提供するために、もう本を読み漁るっていうことしかできなかったんです。その時はコミュニティがなかったから

 

苦境、そしてコミュニティでの出会い

それで僕はそこの通販のシステムだとかを刷新したりだとか、作り直したりしてたんですけど、ただ会社自体が受託開発に移行していって、なかなか「Webをやる」っていうのに行き着けなくて。
結局、ぼくはそこでWebがやれないっていうのがわかって辞めて、そこからフリーランスとして独立しました。

フリーランスとして2007年に独立してからは、ほんと大変でした。人脈もないし、何も考えずに独立してるもんだから、当時は仕事がなくて、「どうやって仕事を取ったらいいんだろう」から試行錯誤していたんですけれど、その後リーマンショックが来てですね。。。
仕事も全く無くなってしまって、食いっぱぐれかけて。
それで、その時に作っていたのが、うちの会社が支援しているオープンソースなんです。

当時福岡に「PHP In Fukuoka」っていうコミュニティがありました。

僕がPHPを勉強していて、ただ、フリーランスっていうのもあったし、独学で僕が勉強しているものは、ちゃんと仕事に生かせるのか、僕がやっている書き方だったり、作り方は合っているのか、やっぱりわからなかったんですよね。

それで、その「PHP In Fukuoka」っていうコミュニティに参加することにしました。そこには面白いことにヌーラボの橋本さんがいました。あとはグルーの迫田さん、CGFMの金内さん(通称:我流さん)といった、結構名だたる人が多かった印象です。

そこで僕はいろんな情報交換をできるようになって、かなり救われたんですね。


オープンソースCMS「baserCMS」の誕生

僕が、「自分が作ったプロダクトをどうにかして何かの成果に変えたい」って言った時に、ヌーラボの橋本さんから、「じゃあオープンソースにしてはどうか」って話をいただいたんです。
そこから、オープンソースCMSである「baserCMS」がスタートしたんですけど、当時その「PHP In Fukuoka」のコミュニティからいろんなコミュニティが派生するようになったんです。
ディレクター勉強会とか、デザイナー勉強会とか、新しいプログラミング言語の勉強会とか、どんどん派生していきました。

その中で出来上がった一つのコミュニティとして、「サイト研究会」(通称「サト研」)っていうコミュニティがあるんです。
ぼくはそこで自分が作ったプロダクトを初めて発表して、「僕はこれをどうにかしてみんなでいいものにしていきたいんで協力してくれないか」、といって、baserのコミュニティをそこで立ち上げたんです。
サト研のメンバーはかなりそのコミュニティに入ってきてくれて、かなり救われました。
そうやって2010年にbaserCMSはリリースに至ったんです。

 

コミュニティ運営を続けていく秘訣は?

  いやぁ難しいですよ。みんな忙しいですもん。日本人ってみんな忙しい。そこに対してお願いをしていかないといけない。
関係性を作っていかないとお願いできないので、定期的に、運営メンバーでイベントをやっています。
「今こういう状況なんです」、「こういうものができそうです」、「こういうイベントが開催されます」とかっていう情報共有をしつつ飲むっていう会を、もう56年くらいやっています。
接点を継続的に作っていく」ってことですね。

そしてサト研で言ってたんですけど、「がんばらない」っていうのが“キー”らしいですね。
がんばるって前提だと、持続性が難しい、って話になってしまう。

あとは「全員参加型」。
勉強会って一方的にスピーカーから周りの人に話すって形式が多いんですけど、それだと参加感がなくて、勉強会っていうよりセミナー聴きに来てるだけっていうのと一緒なので、そうではなくて、一人一人がちゃんと発表ができるような場をつくる場づくりだとか、そういったのも大事ですね。

 

福岡のこれからのコミュニティについて

  世代交代が難しいけど、やっぱり継いでほしいっていうのはあるんですよね。若い子にリーダーとして、入ってきてほしいというか。
僕らおじさん連中はおじさん連中で、ある程度余裕が出てくるから、頼られるんだったら何でもしてあげたいと思ってるんですけど、なかなか頼ってこない(笑)

間違いなく若い子たちのコミュニティは既にあるんですよ。 そのコミュニティと僕らの世代だとか、さらにその下の世代のコミュニティが繋がっていくと、おもしろいかもしれないですね。
まぁ多分文句言われたくないから繋がらないのかなと思うんですけど(笑)

 

 

福岡のいいところは?

コンパクトシティ」ですよ、これが一番。
やっぱり会社同士の間も近いです。ここも(※会社所在地:福岡市中央区大名)、さくらインターネットさんもすぐそこだし、グロースネクスト(FUKUOKA GROWTH NEXT)もすぐそこだし、すぐ行き来したりできる「フレンドリー感」っていうのは強いですね。

東京からの移動も、東京の人はみんな言うんですけど、空港から降りて中心部に10分で行けるっていう。このメリットだとか。
東京と違って、通勤者も会社まで近いんです。大体2~30分、遠くても40分。
となると、タクシー代が安いんですよ。となると、12時過ぎるまで飲めるんですよ(笑)

福岡には結構遅くまで飲む文化があるじゃないですか。そういったところが、福岡の文化を作ってるって、皆さん言ってるのは聞くし、僕もそう思いますね。
やっぱり深夜まで熱弁して語り合って、プロダクトとは何か、みたいな話し合いをしながら、そういった機会を作りやすいのが、福岡の一番の魅力じゃないですかね。

 

仕事以外の活動について

休日にはサーフィンをやっています。
サーフィンはいいですよ。頭の中をすっからかんにできます。
IT系でサーフィンやっている人は多いみたいです。

他には、東京に在住する福岡人のコミュニティ 「リトルフクオカ」の運営を手伝っています。
月の半分は東京にいるので、イベントがあった時には手伝っていますが、そこで会う人たち、やっぱりみんな福岡に帰りたいと言ってるんですよ。
なので、リトルフクオカの活動も、福岡への人材誘致につながるかな、とも思ってやっています。
その中にエンジニアがいれば、それでうちに引き入れて、ですね(笑)

 

これからの活動について

baserCMS」は、開発の副産物として生まれたテーマやプラグインを、みんなに使ってもらえるよう、baserマーケットというWebサイトがあって、そこで開発者は販売することができます。
これは、開発に参加したエンジニアが収入を得る仕組みとして作ったものなんですが、僕がフリーランスのエンジニアを経験したからなんですけど、フリーランスって生活がかかっているんですよね。

特にエンジニアは、一つの仕事の期間が最低でも1か月から半年以上と長く、また仕事は継続して平均的にくるわけでもなく、ぱたりと止まることもあります。だからコンスタントに収入を得ることがものすごく難しい。
そういったフリーランスの方や、小さいウェブ制作会社が、少しでもお金を得る仕組みとして、この仕組みを用意したっていうのもあるんです。

そして、Webクリエイターの方々がWebサイトやWebアプリケーションを作りやすいCMSを目指して オープンソースである「baserCMS」をやっていますが、このオープンソースは、不特定多数の人との共同開発や、様々なユーザーのフィードバックにより、最強のプロダクトを作っていこう、というものです。

エンジニア1人だとできることは限られていますが、それを公開することによって、いろんな人たちのアイデアが得られるし、開発力も得られる。
自分たちだけでなしえないことを実現できる、それができるのが一番大きいメリットです。
このオープンソースのエコシステム、みんなが少しずつがんばって、いいものにしていくというシステムは、エンジニアにとってものすごくマッチすると思うんです。

僕らが培ったこういったオープンソースに関するノウハウを、EFCを通じてもそうですが、福岡のエンジニアに少しでも情報提供して伝えていけたらな、と思っています。

 

 

〈江頭竜二さんプロフィール〉

 

1973年佐賀県生まれ、佐賀育ち。就職後は福岡へ。

27歳で他業種よりIT関連会社へ転職。その後、2007年に独立。

5年間のフリーランスを経験後、20121月、株式会社キャッチアップを立ち上げ、
Webシステム(CMS系)を中心とした提案、開発に携る。
ユーザビリティ・運営を意識した開発を心がけている。

フリーランス中に参加したコミュニティ活動を通じて、2010年に自身が開発していたCMSbaserCMS」をオープンソースとして公開。
現在は、baserCMSのコミュニティであるbaserCMSユーザー会を運営し、全国的な活動を行なっており、
2014年には、baserCMSを継続的に普及促進、機能改善していく為、特定非営利活動法人ベーサー・ファウンデーションを設立。

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