「興味があることをずっとやっていれば、そこから伸びる」
LINE Fukuoka株式会社きしだ なおきさん
公開日:2019.1.18
エンジニアインタビューも3回目となりました! 第3弾は、LINE Fukuoka株式会社の『きしだ なおき』さんです。
-きしださん、今日はよろしくお願いします。さっそくですが、きしださんのPRしたい点を教えてください。
きしだ氏
よろしくお願いします。僕のPRとしては、小さい頃からパソコン触ってました。小学4年生の終わり頃にパソコン買ってもらって、というか親が使いたくて買ったんだと思いますけど。
パソコンが流行った頃で、5〜6万円のあまり高くないやつを買ってもらって、最初にゲームばっかりしてました。当時はゲーム1本4〜5千円とかしていたのでお年玉で買うぐらいだったんですけど、当時のパソコンの雑誌にはゲームのプログラムリストが載ってて、それを正しく入力すればゲームができるので、そういう雑誌を買って、プログラムを入力していましたね。
10歳の壁ってよく言われてて、10歳で論理的なことがわかるようになるらしいんですけど、そうして、10歳になる小学5年生の夏ぐらいに、プログラムの意味がわかったんですね。
で、それからずっとやっていて。
-そうすると、パソコンで分からない、みたいなのはなかったんですか?
きしだ氏
そうですね、パソコンが分からないというのは、感じたことはないですね。
パソコンが来た日に、ガチャガチャ入力したらゲームができるんでは、みたいなことを思ったんですけど、適切に命令を入れないとゲームはできないんですよね。
コンピューターは正しい命令を入れないと動かない、そこに動いてるものも誰かが同じようにして作っている、とわかったんです。
-これで生活していこうというか、職業にしていこうとか、自然にそうなったということですか?
きしだ氏
そもそも職業にするとは考えなかったんですけど、あまりにも普通にやっていたんで、でもお金は稼げるかなと思ってました。
高校生ぐらいの時に小さいプログラムを雑誌に投稿すると、掲載されれば掲載料がもらえたことがあって、まぁ、儲かるな(笑)みたいな。
お金が貰えるって言うのは分かったんだけど、そういうプログラムを量産するのは難しいなということもわかりましたね。
やっぱり大きいプログラムを作る力というのは当時は無かったんで、色々構想したけど企画倒れになってましたね。
-最初フリーランスをずっと続けてらっしゃったんですか?
きしだ氏
大学に通ってたのが、ちょうどインターネットが世に出だした頃で、そういうプログラムを作るアルバイトの募集があったんです。
インターネットのチャット、今だとブラウザーで大体やるんですけど、当時は専用のアプリケーションを作らないといけなくって、それを作って、現代的なプログラミングに触れて、お、すげー便利だなって。画面も大きいし、インターネットすごいなって思いながら、チャット作ってました。
で、動作テストするためにずっとチャットしていたので、それでキー入力が早くなりましたね。
-職業としてはアルバイトから始まったんですね。
きしだ氏
そうですね、その後、九州システム情報技術研究所(今のISITですね!)から、プログラム組める人の募集があったので手伝いに行ったこともあります。で、プログラムのセミナーとかがビルの2階であったりして、結構聞きに行って、それでちゃんとした科学に基づくプログラミングを学んだんです。
芸工大では音響設計学科だったんですが、大学の4年目とかに麻雀のプログラミングとかに行ってました(笑)。その後ISITにも行ったし、トライアルの情報システム関連部署にもお手伝いに行ってました。ISITにいた頃に科学に基づくプログラムを勉強したり、トライアルで業務システムの作り方を学んだりして、一方で、大学の勉強をほぼしなかったので、8年通って、必修1個落として、お疲れさまでした(笑)。
卒論まで書いたんですよね。三味線の楽譜をコンピューターで表現するためのデータフォーマットを作るというものでした。それまで三味線の楽譜を表すいい方法がなかったので、こうやったらできるなっていう、それは別に日頃やってることなので、一週間もかからず完成させました。
音楽の学会で三味線勉強してる人には「役に立ったよ」って言ってもらいました。
-それはきしださんが初めて作ったんですか?
きしだ氏
ツールは作らずにデータフォーマットだけ作って。ツールは次の代の4年生が研究することになって。
一応学会誌にも載って、で、卒業できなかった(笑)。
全然関係ない必修の数学を1個落としたんで、それがトラウマで、ずっといつかちゃんと分かりたいと思って勉強してて、学校出て10年ぐらい経ってやっと、なんとなくわかる感じになって。数学を使ったプログラムを書いて練習してたらやっと分かった感じでした。
-福岡のIT、IoTのエンジニアには、(旧)芸工大出身が多いですね。
きしだ氏
そうですね、変な人が多い(笑)。まともな人は、プログラマではない専攻と関連した職に就くんで。
-きしださんはJavaに詳しいと思いますが、これまでの経緯は?
きしだ氏
フリーランスになる前、ちょうど2000年に大学を追い出された頃、インターネットバブルと同時に起業バブルもあって、起業時にプログラムが組める人の募集がよくありました。それでプログラムを組んで、作ったらまた次の仕事がきて、という風にして、生活費は入ってました。
アルバイトが途切れたときには就職活動を考えようって思ってたけど、結局アルバイトが続いてた頃に、プログラムを教えるアルバイトしてた友人が就職することになって、彼の代わりに教えられる人誰かいないかっていうことで、僕がその職業訓練学校みたいな所でプログラムを教えることになったんですね。そこで Java 教えることになって。
Java自体は触ったことはあるんですけど、真面目には勉強してなくって。教えることになったものの、いいテキストがなかったんで、自分で書こうと思って、そのためにJavaの基本的なことを勉強して、Webに載せたり、そうこうしているうちに、そのままJavaの仕事もするようになったのかな。
-そうすると、一番得意な言語はJava?
きしだ氏
そうですね、自分が書いた「これが一番効率がいい書き方である」ってやつが、多分間違いなく一番効率がいいと思います。
他の言語だとよくわからないんで、もしかしたらもっといい書き方があるかもしれない。動かすだけだったら他の言語でも動かせるんですけど、より適切な書き方とかやっちゃいけないことをやってないか、というのは分からない。
でもJavaであれば、その処理をする書き方としては一番理想の書き方になってるって自分では思えるようになったんです。
勉強しながらテキスト書いてたので、だいぶ大変だったんですけど、後で本にはなりました。
-就職されたのはLINE Fukuokaさんが初めて?
きしだ氏
そうですね、会社員いいよなーって(笑)。確定申告しなくていいし、請求書書かなくていいよなって。
-会社に属していると、フリーランスの頃とはやっていることは違うんですか?
きしだ氏
プログラミングの作業自体はあんまり変わらないですね。企画立てたり、どういうものを求めているか聞いて、いつまでに作るっていうのはあまり変わらないんですけど、その後が違う気がしますね。
フリーランスだと、作る係なんで、できましたっていうとそれで終わり。で、使う人が使って、ここがおかしいから直してって言われますけど、動いている様子は見れないんですね。
で、LINE社内で作っていれば、動いているのが見れて、どれだけアクセスがあって、どういう要望があってっていうのがわかるっていうのがすごく違う。アクセス数も違うし、規模も大きいし、動いてるのも見れる。
フリーランスだと、長期契約を結ばないと見られない。それに、大きな仕事をするのなら何人かのチームを作らないといけない。それなら会社に属するのと変わらないと思って。
だから運用を見る、大きなものを作るのであれば、会社員の方がいいなと思って。
東京の会社に就職するかなとかも思ったんですけど、東京に仕事で行くたんびに、今もなんですけど、飛行機降りて、電車に乗って、品川に着いて、山手線に乗る瞬間に、東京ダメだって(笑)。
-東京でも勉強会などに出たりするんですか?
きしだ氏
東京のコミュニティもいろいろあって、デザイナーはデザイナーでコミュニティがある。で、合う人は合うけど、気が合わない人とかいるわけじゃないですか。
福岡のコミュニティって、なんかいろんな人が集まって、ちょうどいい人数だと思いますね。
2010年頃にTwitter が広まってきた時に、パソコンで仕事するいろんな人とみんな繋がって、それでコミュニティができて。それでみんな仲がいいってのは面白いですね。
それもあるんで、福岡を離れづらくなりました(笑)。
コミュニティって大事です。
-スキルは基本的に独学で?
きしだ氏
スキルは、そうですね。すごい長い時間をかけてやってきました。
—どこから知識を得たのが一番大きいですか?
きしだ氏
ISITに入ったのがやっぱり一番大きいですね。ISITで科学に基づく勉強法を知ったのがとても大きかった。もちろん、情報工学みたいなのがあることは知ってて、それを勉強する人がいるって言うのは知ってたけど、実際目の当たりにしてちょっと関わりを持つことで、刺激を受けましたね。
で、そういうのをちゃんとやらないとなって思って、当時は、月に20万円分ぐらい本を買ったりとかする時期が何ヶ月かあって、その後もしばらくは月10万円分くらい本を買って、その中の何冊かはちゃんと読みました。部屋は本だらけになってますね。裁断してスキャンして電子化したんで、だいぶ減ってはいるんですけど、それでもまだ…100冊ぐらい残ってるんです。そろそろ、見ないし古いんで、処分しないと。
-エンジニアを目指す人に、こういうスキルを身につけたらいいよ、というようなアドバイスが何かありますか?
きしだ氏
いっぱい勉強しないといけないってことと、勉強していて効率良いやり方って教わると思うんですけど、効率良くなくてもよくて、楽しそうなことをずっとやってればいいんじゃないかな。興味があることをずっと。
-そこからぐっと伸びていくと。
きしだ氏
ぐっとは伸びないんで(笑)。
勉強を初めて5年とか10年って、多分まだ20歳代で、30歳代でも10年かけてもまだ40歳代なわけですよね。ずっと気長にやればいいんじゃないかなって。
僕にしても定年まであと10何年かあるわけで、その間ずっと勉強する必要はある。そうすると、飽きたらダメと言うか、諦めてはいけないので、楽しくやれる方がいいですね。
ずっと勉強するものに触れていれば、やった分だけは前に進む。興味持てることをやった方がいい。最近行ってるイベントでも話すのは、基本情報技術者試験、あれは資格を取るためではなく理解するためにやるんだと。ちゃんと必要なことがまとめられてるんで、勉強することがわかんなくなったらあの資格の分かんないところとか、興味持ってなかったっていう所をやるといい気がします。基本情報技術者試験とかは、情報技術者にはこういう知識がいるはずだって、国がお金かけてちゃんとまとめているので。
これは3分類あって、technology っていうところだけでとりあえずいいんですけど、今でもそこは必要だなぁと。それ全部本当に理解しようと思ってやるとやっぱり10年くらいかかるんで。
-若い人たちに、フリーランスと会社員、こっちがいいよっていうアドバイスとかありますか?
きしだ氏
いろんな考え方があると思うんですが、僕は、「ダメな会社」よりはフリーランスの方がいいけど、フリーランスより絶対に「いい会社」の方がいいと思います。
だから自分で環境が作れるなら、ダメな会社にいるよりはフリーランスの方がまぁいいんですけど、環境を用意してくれている「いい会社」があるんであれば、そっちの方がいいですね。
やりたいことにもよりますよね。経営のようなものをやりたいとか、自分でチームを作ったりを本当にやりたいんであれば、フリーランスでもいいとは思うんですけど、まぁそういった経営とか営業的なことにあまり興味がなくてプログラミング、エンジニアリングがしたいのであれば、いい会社でやるのが一番いい。自分で環境作れるんであれば、フリーランスでやった方がいいけど、ダメな会社に入るのは一番ダメですね(笑)。
-仕事場で取り組まれてるプロジェクトとかで目標とかこうしたいとかありますか?
きしだ氏
具体的にはなくって、ちゃんとやってたら面白いことにはなるだろうねっていう感じ。
世の中変化激しいんで、1年後にどういったテクノロジーが出てくるか大体分かるんですけど、それでどういう風にエンジニアリングが変わるかっていうのはよく分からない。
10年前に、ハードウェアやインフラの環境がこうなるって言うのは完全にわかっていたことで、いざそうなってると、やっぱり何ですかね、物の作り方も全然変わっているし、いってみないとわかんないっていうのがある。
まぁ大体こういうのが前提になる世の中になるって言うのはわかるけど、そこで実際何が起こるかよくわからないんで、目の前のことちゃんとやっていかないといけないなと。
-エンジニアフレンドリーシティという取組みをしているんですが、こうすればいいんじゃないかという意見は?
きしだ氏
こっちの視点からすると、市がやることはずれてる、みたいな意見が多いかもしれないけれど、僕はやっぱり続けて欲しいなぁと。
もうちょっとお互い近づかないといけないなというのはあります。
あと、10年前にあったら面白かったというのはありますが、10年前は10年前でそれなりに何かがあったとは思うんですけど、でも役所がすごい変わって、こちら側にすごい近づいてくるようになったのがありがたい。
それを続けてもらえると。さっきの話と一緒ですけど、どういうことをやればいいかっていうのはよくわかんないですけど、続ければ何か変わるんではという。
-エンジニアさんと共に作っていきましょうというコンセプトで取り組んでいますので、引き続き、きしださんからもご意見をいただければと思います。
あと、きしださんがすごいと感じるエンジニアさんがおられますか?
きしだ氏
みんなやっぱ凄いので…みんな凄いんですよね。すごい成果出してる人たちが世の中には多い。
みんな目の前の仕事をちゃんと片付けて課題を片付けて、みんな前に進んでる感じがすごい。それに僕は負けてる気がするので(笑)。
追いついけるようにというか、僕がやってるのは派手なだけで、たいしてすごくないのだけど、それでも僕がやっていることに、たまに「勇気付けられる」とか「役に立つ」とか言ってもらえるんで、これからも継続できて、役に立てられればと思いますね。
みんな勘違いして僕をすごいって言ってる人がいるけど、勘違いして目指してもらって僕よりもすごい人になってもらって。でも僕もちゃんとそういうの当てはまるように、ちゃんとやりたいなと思いますね。
-今日はありがとうございました。
きしだ なおきさん 略歴
九州芸術工科大学 芸術工学部 音響設計学科を満期退学後、フリーランスでの活動を経て、
言語はJava。あと、ビールが好きです。