INTERVIEW

「PHPカンファレンス福岡」を主催する 福岡エンジニアコミュニティの立役者

株式会社イノベーター・ジャパン 赤瀬 剛さん

公開日:2019.9.2

コミュニティ活動が盛んと言われる福岡のエンジニア界隈の中でも、自ら勉強会を主催し、シーンを牽引してきた中心人物の一人が、株式会社イノベーター・ジャパンの赤瀬 剛さんです。

勉強会「Fukuoka.php」の継続的な開催や、300名以上が参加する「PHPカンファレンス福岡」の運営など、並々ならぬ情熱で福岡のエンジニアシーンを盛り上げてきた赤瀬さん。
今回は、これまでの歩みや、勉強会にかける思い、今後の展望について語っていただきました。

 

きっかけは、父が持ち帰ったMSX

--本日はよろしくお願いします。早速ですが、赤瀬さんはどんなきっかけでエンジニアになろうと思われたんですか?

小学生の頃、電気メーカーに勤めていた父が、MSX(1983年にマイクロソフトとアスキーが提唱し広まったパソコンの共通規格・端末)を家に持って帰ってきたことがありました。
そこで、初めてコンピューターに触れて。
当初は単にゲームをしていたぐらいですが、パソコンの持つ可能性に夢中になって、「これが仕事にできたら最高だな」と思い至るようになりました。
商業高校に行けばコンピューターを触れるとわかって、地元・長崎の商業高校に進学し、その後は情報関係の教授がいた長崎県立大学に行きました。中学の頃の夢を、そのまま追い求めてきた感じです。

--早い段階からエンジニアを目指していたわけですね。福岡にいらしたのはなぜなんですか?

当時の長崎にはそういう会社が少なかったんです。
大学を卒業した2000年当時はインターネット黎明期で、会社の求人情報をネットでちらほら見られるようになった頃でした。それで福岡の会社を見つけて。

私は高校の授業でプログラミング言語を習っていたこともあって、研修はそこそこに、すぐ現場に入って先輩から学びながら仕事を始めました。
「こんな楽しいことが、本当に仕事になるんだ!」と信じられない気持ちで、めちゃくちゃ嬉しかったですね。

--念願が叶ったわけですね。

ええ。SIerとして働いていたんですが、クライアントは携帯キャリアや飲料メーカー、ガス会社など、業界が多様で規模も大きめでした。
仕事を通して得た経験は大きいですね。6年ぐらい働いた後、web関係の仕事にシフトしたくて、PHPを専門とするwebの会社に転職しました。

 

人生を変えたカンファレンス開催

--勉強会やコミュニティ活動に加わるようになった経緯を教えてください。

PHPを専門とする2社目に入ってから、それまでの業務の中ではあまり意識できていなかったコーディング面の未熟さが見えてきて。
もっと技術を学びたい、もっと詳しくなりたいという一心でした。
しばらく時間が空くんですが、3社目に転職した頃に「Fukuoka.php」の共同運営者となる株式会社ビットフォレストの市川快さんとの出会いがあって。
彼は当時、関東から福岡に移住したばかりで、Twitter上で知り合ったんです。
実際に会っていろいろ話をしてみると、彼もコミュニティを盛り上げていきたいという思いがあったので、それならばと一緒に立ち上げることにして。
当時よく通っていた「HTML5+α@福岡」という勉強会の運営者が後任を探していて、そちらも私が引き継ぐことになり、同時に二つ主催していた時期もありましたが、今は「Fukuoka.php」に絞って活動しています。

--勉強会って、具体的にはどんなことをするんですか?

その時々で違いますが、最新情報の共有だったり、実際の業務で得た知識など情報交換がメインですね。
協力してくれる企業にスペースをお借りして、参加者20〜30人ぐらいの規模でやっています。
2ヶ月に一度、偶数月の開催ですが、忙しい時期は間が空くこともあるし、状況に応じてゆるく運営していますね。あまりギスギスやると、続かなくなっちゃいますから。

--「PHPカンファレンス福岡」は、今では福岡のエンジニアコミュニティの一大イベントになっています。こちらも赤瀬さんが発起人ですね?

「HTML5+α@福岡」で一度大きなイベントをやった時に、著名なゲストを呼べたり、参加者も多く、結果的には大盛況となりました。
「勉強したい」という意欲のある人がこんなにいるんだと感動して、そういう人たちが一堂に集まれる場として、イベントもいいなと思うようになりました。
そこから、「PHPカンファレンス福岡」の開催につながっていきました。

--しかし、本業がありながら、この規模のイベントを運営するには相当な労力が必要ですよね。

正直言って大変です(笑)。でも、回を重ねるごとに規模が大きくなり、他の地域で行われるPHPカンファレンスともつながったり、私自身もいろんなところに呼んでていただいて、お話させていただく機会をもらったり。
大げさなようですが、勉強会とカンファレンスを主催するようになって、人生が変わりました。
私自身は、技術や知識の高みによって、コミュニティに価値をもたらせるようなタイプではないと思っています。
でも、運営など場づくりによって、シーンに貢献できている実感が得られていますね。
会社側に、活動への理解があることも大きいです。コミュニティ活動には、結構な時間が必要ですから。

--本業へのフィードバックもありますか?

ええ。イベント運営って、プロジェクトマネジメントとよく似ていると思うんです。
納期と予算が決まっていて、たくさんの人が関わり、計画的に進めなければいけない。
私は、今の会社では受託のシステム開発や自社サービスの開発、プロジェクト管理や採用面接など多岐にわたる仕事をしていますが、イベント運営の経験が大きく役立っていると感じます。

 

ライバルではなく、ともに学ぶ仲間として

--たくさんのエンジニアと関わっている赤瀬さんから見て、福岡の街は、エンジニアにとって良い環境と言えますか?

いろんな分野の勉強会が盛んなのはいいことだと思います。
IT関連の会社も増えましたし、コンパクトシティなので会社同士の距離も近く、イベントにも出かけやすい。
新しい技術に触れるという意味でも、だいぶ充実してきていると思いますよ。

--それは、赤瀬さんはじめ皆さんの尽力があるからだと思います。

いえいえ、ずっと現役のエンジニアでいるためには必要なことだと思って、自分のためにやってきたようなところもありますからね。
エンジニアって、属している企業で見ればライバル関係にあっても、勉強会では不思議と仲間になれる。
みんなで情報を共有して、業界全体を良くしていこうという気持ちが強いのが、とてもいいなと思っています。

--一方で課題があるとすればどんなところでしょう?

コミュニティ運営者の立場からすると、勉強会の会場探しに苦労していますね。いつも同じ企業に会場をお借りしているのですが、さすがに毎回となると申し訳なくて。

--8月21日に福岡市赤煉瓦文化館内にエンジニアカフェがオープンします。利用料も無料なので、ぜひご利用ください!(※インタビュー実施日は8月1日)

もちろん存じています。今後利用を検討したいですね。

--最後に、今後の展望を聞かせてください。

エンジニアが楽しく、自分らしく働けたらいいなという思いはずっとあります。
そのために、自分にできることのひとつがコミュニティ活動であり、勉強会。
新しい世代も巻き込んで、福岡をエンジニアにとっていい街にしていきたいですね。

--赤瀬さんには大変重要な役割を果たしていただいています。本日はどうもありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

<赤瀬 剛(あかせ・つよし)さんプロフィール>

2000年3月:長崎県立大学経済学部流通学科卒
2000年4月:SIerとして携帯電話キャリア、飲料メーカーなどのシステム開発を担当
2006年2月: CMS開発会社へ転職し、PHPを利用したPC向けのwebアプリケーション開発に従事
2011年10月: CMS開発会社へ転職し、PHPを利用したモバイル向けのwebアプリケーション開発に従
2012年5月: 勉強会「Fukuoka.php」を立ち上げ
2013年2月:イベント「HTML5 CARNIVAL FUKUOKA」@九州産業大学を主催
2015年7月:勉強会を主催していたことが縁となり、株式会社イノベーター・ジャパンに入社

PHPにフォーカスした勉強会である「Fukuoka.php」の主催、この勉強会をきっかけに誕生した「PHPカンファレンス福岡」を主催・運営している

PHPカンファレンス福岡2019 https://phpcon.fukuoka.jp/2019/

 

取材・文・写真 : 佐藤 渉

その他のエンジニア
インタビュー