ENGINEER
INTERVIEW

福岡にXRを広めるため、「作りたい」の初歩からサポート。エンジニアカフェのハッカーサポーター就任インタビュー。

福岡XR部・株式会社Jollystics長峰慶三さん

長峰慶三さん

公開日:2020.10.9

近年、VTuberの登場やゲームの普及で私たちにとってもなじみあるものになりつつあるARやVR。それらの技術を総称するのが「XR(X Reality,Extended Reality)」という言葉です。

福岡でXRを中心とする制作・開発を行っているのが、株式会社Jollysticsの長峰慶三さん。ゲームのプログラマーからキャリアをスタートさせた長峰さんとXRの出会い、主催しているコミュニティ「福岡XR部」の活動、エンジニアカフェのハッカーサポーターに就任した、いまの心境について語っていただきました。

ゲーム作りに夢中になった大学時代

本日はよろしくお願いいたします。まず、長峰さんのこれまでの歩みを教えてください。

大学時代は物理を学んでいましたが、情報系の授業を受講してプログラミングに触れたら面白くなり、のめり込みました。子どもの頃に「ゲームを作る人になりたい」と考えていたことを思い出し、プログラミングを学ぶうちにゲーム会社への就職を目指すようになりました。

とはいえ、学部時代は自分の作品もないし、ゲームの作り方もほとんどわかっていなくて断念せざるを得ませんでした。その後大学院に進学し、所属していた研究室のなかにあった有志の制作チームで先輩たちにゲーム作りを教えてもらって、自分でも作品を作るようになりました

どんなゲームを作っていたのですか?

初めてiPhoneを触る人に操作を教えるゲームです。たとえば、ピンチ(二本の指で画面に触れて拡大・縮小を行う)の機能などを自然に楽しみながら習得できるように、と考えて作っていました。

RPGのように華やかなゲームももちろん素敵ですが、自分で作るならば今までなかった概念や「これができたら楽しいだろうな」というものを小さくてもいいから形にしたいと思い、取り組んでいました。

卒業後は、念願のゲーム会社への就職を果たしたと。

ええ。福岡のゲーム会社に2年間在籍し、2014年に研究室時代の先輩が会社を立ち上げるタイミングで、そこに転職しました。

2016年ごろまでは、Unityという主にゲーム開発に使われるソフトを使ってのゲームやアプリケーション作成を主に行っていました。

XRを使ったお仕事を始められたきっかけを教えてください。

2017年に「Microsoft HoloLens」というヘッドマウントディスプレイが日本で発売されました。現実世界にPCの画面を浮かせて操作したり、ゲームのキャラクターと戦ったりできるものです。買って使ってみたときに、「未来はきっとこうなるんだろうな」と直感的に思ったのを覚えています。

それから、本格的にARやVRが好きになって会社の案件でも請けるようになっていきました。今では、会社で担当している仕事の8割がXRを使ったものです。

長峰さんが思う、XRの魅力とは何でしょうか。

僕はXRの中でも、現実をベースにしてバーチャルが混じるような体験が好きです。

例えばARだと、空間をスキャンしたモデルを現実に重ねてリアルからバーチャルに変化するような表現だったり。逆にVRだとスキャンした空間の中に入ってその場にいる感覚になりつつ、現実では難しい体験ができることが面白いですね。

さらに、これらの現実ベースのAR/VRを相互に連携させることで、VRで体験している人のアバターが現実空間のARで見えたり、現実空間でARを体験している人がVR空間でも表示されたり、リアルとバーチャルがごちゃ混ぜになったような世界になるとすごく面白いなと思っています。

お仕事で携わるがゆえの大変さはありますか?

前例がないことが多く、そもそも作れるかどうかわからないところからスタートすることもあります。見積もりを出すのが難しいですね(笑)

ただ、成功したら前例が作れたことになるので、ひとつ発明をしたようなもので、本当に嬉しいですね。うまくいきそうなことが分かったら、すごくテンションが上がります。

技術に親しむことからアイデアが生まれる

福岡XR部を立ち上げられた経緯を教えてください。

コミュニティの立ち上げ前は、東京の知り合いが関わっているコミュニティがXRやセンサーデバイスをテーマにしていたので、そこから情報を得ていました。でも、僕はなかなか現地に行けなくて、大勢でわいわい楽しくやっているのを見てうらやましかったんです。

当時、僕の周りにはXRを語れる場がなく、もっといろんな人と話したいと思っていました。それで、福岡の知り合いに声をかけて飲み会をしたり、東京や他地域の知り合いが福岡に来た時にミートアップのようなことをやるようになって。だんだんと人も増えてきたし、せっかくならきちんと活動したいなと「福岡XR部」を立ち上げたのが2018年7月です。

どのような活動をしていますか?

meetupやLT会などの「話す」、もくもく会やハッカソンなどの「作る」、新しいデバイスに触る「体験する」といった様々な角度から活動しています。今年のEFCフェスティバルで受付を務めたVTuber「えんかちゃん」は、XR部のハッカソンで生まれたキャラクターです。

それから、体育館を借りてVRゲームの対戦をやったり、オンラインお花見会などの遊びもやっています。

えんかちゃん

2020年1月に開催されたEFCフェスティバルで受付を務めたVTuber「えんかちゃん」。モニターに設置されたカメラで人の動きを読み取り、それと同じ動き、同じ言葉を話すようになっている。服装は、会場となった赤煉瓦文化館をイメージしたもの。

活動内容が幅広いですね。

僕自身がXRに触れているのが本当に楽しいから、みんなにも楽しいと思ってもらいたいんです。楽しむことで「もしかしてこの技術でこんなこともできるんじゃないか」「次はこんなことをやってみたい」とアイデアも湧いてきますから。

それと、「福岡でXRを使える人を増やしたい」が目標のひとつです。新しい人に知ってもらわないと広がっていかないから、エンジニアだけでなくXRの技術や表現、未来に興味がある人はみんな来てほしい。

初めての人は本格的なイベントには行きづらいだろうから、まずは遊びから入ってもらえたらと。以前、XRに興味がある人に向けて、「Hello XR」というXRの楽しさや魅力を伝えるイベントを行いました。今後も定期的にやっていきたいですね。

新型コロナウイルスの影響で一ヶ所に集まることが難しくなってしまいましたが、何か対応はしていますか?

元々、「XRミーティング」という東京、大阪など他地域のXRコミュニティとオンラインでつないで情報交換や発表などをしていました。福岡のメンバーは一ヶ所に集まっていましたがそれができなくなったので、最初は各々の家からzoomをつないで対応しました。ただ、それだと雑談など個別のコミュニケーションが生まれないので、発表を聞いていても物足りなさが残ります。

そこで、Hubsというアバターで集まれるサービスを利用しました。画面共有やチャットの機能があるので、「みんなで同じものを見聞きしながら話す」という、以前のスタイルが再現できます。

オンラインでの活動の際に心がけていることを教えてください。

リアルと比べて温度感や空気が伝わりづらくなるので、この人はあまり話してないな、輪に入りづらいのかなと思ったら積極的に声をかけるようにしています。

XR技術は、オンラインイベントをより充実したもの、オンラインならではのものにできる可能性があるので今後もうまく使っていきたいです。

ものづくりを志す人の背中を押したい

ずっと福岡を拠点にお仕事やコミュニティ活動をされていますが、どのようなことを感じますか。

福岡は住みやすいし、都心にも出やすい。ずっとここで働きたいなと思っています。一方で、XRに取り組んでいる人や福岡での案件が少ないことは課題ですね。福岡にいながらXRの仕事もきちんとできるようになりたいと思ったのが、コミュニティ活動を始めたきっかけのひとつでもあります。

エンジニアカフェのハッカーサポーターに就任されました。やってみたいことを教えてください。

「UnityやXRについて知りたい。ものを作りたいけどどうしていいかわからない」という人の背中を押してあげたいです。

ものづくりの世界って、「やりたいと思う人は一人でもやっている」「やらない人は結局口だけで、本当にやりたいわけじゃない」そんな風潮を感じることがありますが、必ずしもそうではないと思うんです。

僕もゲームの作り方が全く分からなかったけど、研究室の先輩たちが教えてくれたからできるようになったし、ゲーム会社への就職もできました。あと一つきっかけがあれば、できるようになる人はきっとたくさんいるはず。そんな人のサポートができればいいなと思います。

素敵ですね。お仕事で今後やってみたいことは?

ARの共有体験をやっていきたいです。例えば「ポケモンGo」で自分に見えているピカチュウが他の人にも見えるとか。ゲットした瞬間も共有できたら、より体験が楽しく、盛り上がるものになるはずです。今後、ARの共有体験は当たり前のものになっていくはずなので、その領域に関わっていきたいです。

コミュニティ活動の展望はありますか?

他分野のコミュニティとのコラボをやってみたいです。例えばUI/UX分野。

XRのUIとして「空間にパネルを浮かべて指で押す」という形式がありますが、個人的には押した感触が無く分かりづらかったり、腕を上げたまま操作していると疲れる、という印象があり、体験として最適ではないと感じています。

人間が体を動かすときに、どういう見た目やインタラクションであってほしいかを追求するのはUI/UXの領域だと思うので、そういう人たちと話をさせてもらえると新しいものができるのはないかと期待しています。

本日はありがとうございました。今後の展開に期待しています。

長峰慶三さん

<長峰慶三(ながみね・けいぞう)さんプロフィール>
宮崎県生まれ
2012年:九州大学 大学院 修了。 株式会社レベルファイブに入社
2014年:株式会社Jollysticsに入社
2018年:福岡XR部を立ち上げ

ブログ:https://twitter.com/KzoNag

福岡XR部についてはこちら

取材・文:立野由利子、写真:EFC福岡

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