【新コーナー】福岡の企業に訊く エンジニアフレンドリーチャレンジ ~第2回「エンジニアとの向き合い方」株式会社ヌーラボ、株式会社エフェクト~
公開日:2021.8.2
第2回のテーマ【エンジニアとの向き合い方】
前回より始まった新コーナー「エンジニアフレンドリーチャレンジ」。第2回のテーマは、「エンジニアとの向き合い方」です。エンジニアが事業の根幹を支える企業においては、エンジニアとの向き合い方にも工夫が見られます。今回は、株式会社ヌーラボと株式会社エフェクトの2社に話を伺いました。
自社のワークフローを徹底改善
株式会社ヌーラボは、「働くを楽しくする」をテーマに、さまざまなコラボレーションツールを提供する企業。プロジェクト管理ツールの「Backlog(バックログ)」やビジネスチャットツール「Typetalk(タイプトーク)」など、世界中にユーザーを持つサービスの開発・提供を行っています。社員のうち約8割がエンジニアですが、エンジニアだけでなく全社員を対象に、労働環境の向上を目指したさまざまな取り組みを行っています。
「私たち自身が楽しく働き、ユーザーの課題解決に集中できるように、次の2つのことを大切にしています。ひとつは、社員がストレスなく働けるよう、ワークフローを常に改善していくこと。そしてもうひとつは、従業員エンゲージメントの高い組織を作ること。このふたつを両輪として回していくことを心がけています」。人事担当の安立沙耶佳さんはそう言います。
ワークフローの改善は、ヌーラボがまさに得意とするところ。属人化した業務を減らして仕組み化し、そこにオンラインツールなどを駆使して効率化を図ります。適切な労働環境を維持し、よりよく変えていくための基盤になるものです。
リモートでもコミュニケーションは減らさない
また、従業員エンゲージメントについては、あえて「従業員満足」ではなく「エンゲージメント」と表現することに、こだわりがあるのだとか。
「社員をお客様と捉えて、丁重にケアするという考え方は、うちの組織には合わないと思っています。むしろ、社員はともに目標を共有し、ゴールに向かって進むパートナー。だから、エンゲージメント(結びつき)を大事にしているんです」(安立さん)。
ヌーラボでは、コロナ以前よりコアタイムのないフレックス制度を導入し、働き方の自由度を確保してきました。加えて、コロナ禍における労働環境の向上にも意識して取り組み、在宅勤務者への補助手当として月に15,000円を支給。コミュニケーション活性化のために、雑談の時間を設けたり、部活動(オンラインでの活動でも可)への支援制度を作ったりと、社員同士が積極的に関与しあう仕組みを整えています。
それらの成果か、直近の社内サーベイでは、「自分の会社を周囲の人に勧めたいか」の項目が前回と比較して43ポイントも上昇(参考 https://nulab.com/ja/press-release/pr-2106-employee-engagement-survey/)。「リモートワークを前提とした働き方や業務の役割分担が徐々に定まり、ストレスが少なく業務に当たれる体制が整ってきた結果ではないか」と安立さんは感じているそうです。
従業員エンゲージメントの高さは、採用活動にも有利に働きます。「これほど全社員が採用活動に協力的な会社は、初めてでした」。5月に新しく人事として入社した吉田彩さんは言います。「ともに働く仲間を、自分たちで一緒に探したいという意識が強いんだと感じます」。
チームでコラボレーションするツールを提供するヌーラボ。自社のエンジニアとの向き合い方も、チームを大事にするヌーラボらしさが感じられる試みが数多くありました。
起業の動機は、エンジニアがもっと活躍すること
続いて、株式会社エフェクトに話を伺いました。エフェクトは、家電など電化製品の動きを制御する、組み込みソフトウェアの開発をメインに幅広く事業を展開する企業。自身もエンジニアである会長・光安淳さんは、エンジニアの働き方に疑問を持ち、自ら起業したという経緯があります。
「私が企業内の社員エンジニアだった10年前は、メーカーが指示する仕様通りにプログラムを起こす仕事が多く、それ以上の付加価値を発揮できない状況に、もどかしさを感じていました。残業が当たり前の日々の中、エンジニアがもっと自由に活躍できる環境をつくりたいと思い、起業に至ったのです」(光安さん)。
大手メーカー製品の組み込みソフトウェア開発となると、小規模で社歴の浅い企業は不利。入り込む余地が少ない中を、持ち前の技術力で突破した光安さんは、創業後2ヶ月目から大手メーカーと取引を開始。事業が軌道に乗り始めてからは、特に研究開発に力を入れ、技術力をさらに高めてきました。
その基本姿勢は、今も変わりません。2021年6月現在、社員数は35名。そのうち30名以上がエンジニアという、エンジニア主体の企業。自発的な勉強会などが活発に行われています。
「コロナ前までは、毎週のようにお酒を飲みながら技術に関する勉強会をしていて、議論も白熱していました。みんな、新しい技術が好きなんですよね」(光安さん)。
優秀なエンジニアとともに、グループシナジーを生かす
株式会社エフェクトは、2021年3月に建設コンサル業を展開する株式会社長大グループの一員となり、新しく輿石洋社長が就任しました。輿石さんは、エンジニアとコミュニケーションを取る中で、驚いたことがあると言います。
「若手からベテランまで非常に意欲が高く、上司部下の垣根なく活発な意見交換が行われている様に驚きました。創業時からエンジニアとしっかり向き合い、耳を傾けてきたからこそ、風通しのよい組織が実現していると感じましたね」(輿石さん)。
この組織が生み出す開発力は、地域でも注目され、現在では福岡県と共同のプロジェクトも動いています。
車内でアルコールを検知すると管理サーバーへデータが送信され、ドライバーに注意喚起を行う飲酒運転防止IoTシステム「"R"call System」。自律飛行型のドローンで監視し、生育状況や病気検知などを行うイチゴ農園監視システム「アピス」。地域課題に積極的に取り組む姿勢は、メディアにも多数取り上げられています。
「生まれ育った福岡の街に愛着がありますし、仕事を通じて貢献することで、街への感謝を表したい」。そう光安さんは語ってくれました。
今後は、長大グループの傘下となったことでグループ内のさまざまな課題に取り組み、エンジニアがさらに活躍できる環境になるとのこと。エンジニアの力が企業や街を変える、その一例になっていくのかもしれません。
[取材を終えて]
今回お話を伺った2社は、形は違えど、社内のエンジニアの力を最大限に引き出すことに意識的に取り組んでいるという点で、共通していました。社内の風通しを良くし、コミュニケーションを活性化させる。そのことが、ひいては自社サービス自体の強みになっていく。エンジニアフレンドリーであることがもたらす具体的なメリットを、お話の節々から感じられた回となりました。
取材・文 : 佐藤 渉
写真: 各社提供