INTERVIEW

【新コーナー】福岡の企業に訊く エンジニアフレンドリーチャレンジ ~第1回「エンジニアへのサポート制度」株式会社Fusic、株式会社ペンシル~

公開日:2021.7.2

第1回のテーマエンジニアへのサポート制度】

今回より始まったこのコーナーでは、福岡を拠点にする企業が取り組む、エンジニアフレンドリーな試みをご紹介していきます。初回のテーマは、「エンジニアへのサポート制度」。エンジニアの働きやすさを確保するサポート制度について、2社に話を聞きました。

エンジニアの個性が多彩な、“マーブル”組織

最初にお話を伺ったのは、株式会社Fusic。Webシステムの開発を中心に、AIやIoT、AWS(Amazon Web Services)の導入支援などに取り組むIT企業です。まだ先端分野だったこの業界で2003年に創業し、以後18年にわたって、受託開発をメインにオーダーメイドシステムを高い技術で作り上げてきました。
「クライアントの課題を徹底的にヒアリングし、ゼロベースで提案できることが私たちの強み」。
事業本部の本部長・櫻川幸三さんは、そう言います。

「技術力や成長意欲の高いエンジニアにとって、最善の環境作りをしたい」と語る櫻川さん

さまざまな業界のクライアントの課題と向き合う中で得られた経験を活かして、自社プロダクトの開発も多くしてきました。現在は受託開発が6割、自社プロダクトの開発が4割。それを支えているのが50名強のエンジニアチームです。

「弊社のエンジニアは、成長意欲が高いだけでなく、学びを共有して組織全体の価値とすることに慣れています。社内勉強会は毎週のように頻繁に行っていますし、新しい技術をインプットする機会も多くあります」(櫻川さん)。

これら各エンジニアの高いモチベーションを、企業としても積極的にサポート。
「マーブル制度」と呼ばれる、さまざまな技術向上支援のための制度を用意しています。

「マーブルというのは、組織として目指す色合いです。単色ではなく、色とりどりの個性を持ったエンジニアが集まり、マーブル模様を描いている組織こそ、強いんじゃないかと」(櫻川さん)。

例えば、勉強会や資格取得などにかかる費用を会社が負担する制度があり、書籍の購入費を全額支援する制度は、特に多く利用されています。

ベテランにも若手にもスポットライトを

また、年に4回は開発合宿を実施。エンジニア以外も参加するこの合宿では、「業務から離れたものの開発」を行うのがルール。期間内にアウトプットすることに重きが置かれ、楽しみながら何かを学び、つくり出すことを促しています。

「普段の業務の発想から離れて、自由に学びや開発を楽しんでもらう。そこで、本来のエンジニアリングの楽しさを思い出してもらうことが目的です」(櫻川さん)。
デザイナーや営業など、部署の異なる人との交流にもなり、社内活性に大きく貢献しているといいます。

日帰りと泊まり、交互に年4回行われる開発合宿

そして、査定につながる人事評価とは別に、表彰制度も用意されています。業績につながる成果を上げた人だけでなく、個人の成長度合いや、社外への発信活動などが評価され、表彰や金一封を受けることも。

「成果だけを評価軸にすると、一部のベテラン・エンジニアばかりが注目されてしまいますが、若手でもその人なりの役割があるはず。会社として、そこにはきちんと目を届かせていきたいですね」(櫻川さん)。

マーブルのように多様な個性を生かして伸ばす制度が、Fusicには用意されているんですね。

個人の学びを会社の資産に変える

さて次は、福岡を拠点に全国のクライアントのWebコンサルを請け負う、株式会社ペンシル。「研究開発型コンサル」として、クライアントへのヒアリングとリサーチ、課題の抽出、コンバージョンを追求した改善提案を強みとしています。

「私たちの財産は人。ですから、エンジニアが働きやすくハッピーな環境を作ることが第一です」。
システムソリューション部マネージャーの森秀人さんは言います。

エンジニアをサポートする制度として、頻繁に利用されているのは、「匠制度」。
書籍やセミナー参加などの自己研鑽に必要な経費を会社が負担してくれるものです。海外のカンファレンスに出席する場合も活用でき、重宝されているとのこと。

「エンジニアは常に先端の事例を知り、知識をアップデートしていく必要があるので、費用にとらわれずに参加してもらえるようにしています」(森さん)。

とはいえ、一人ずつ海外に行く費用までサポートするとなると、会社側の負担も大きいのでは?

「会社のサポートで海外研修に行くと、エンジニアもその期待に応えようと努力します。帰ったらレポートを上げて、研修で得た知見を社内で共有するので、会社の財産になるんです」と同部の山下康仁さん。

和気あいあいと行われる部署合宿。天井の飾り付けは普段からあり、ハロウィンやクリスマス期にはこの3倍になるとか

ユニークなのは、「おかえりなさい制度」。一度退職しても、希望があればいつでも復帰できる、エンジニアがきっかけとなってできた制度です。

「以前、あるエンジニアが友人と会社を立ち上げることになり、次のチャレンジを祝して送り出しました。しかし計画通りに事業が運ばず、途方に暮れていて。そこで、再度弊社に迎え入れることになりました。こんなセーフティーネットがあれば、思い切った挑戦もしやすいんじゃないでしょうか」(森さん)。

他にも、紹介した友人知人や家族が入社すると報奨金が出るなど、人に優しい制度が多い印象。

「ITの仕事って、どうしても無機質になりがちですけど、本来は人の感性がすごく大事。それを上手に引き出してくれる制度が揃っていると感じます」。
同部の佐藤大介さんはそう語ります。

多様な価値観を当たり前に持っておく

またSDGsの観点から、多様な価値観を持つことを会社として奨励しているのも、ペンシルの特徴。例えば、九州レインボープライドの代表であり、自身もゲイである「あなたののぶゑ」さんが、外部メンターとして社員と面談する機会を設けています。これは、学校の保健室の先生のように、社員の誰もが気軽に相談できる存在がいてほしいという声が上がったことから始まったとか。

悩み相談のほか、社内ラジオ『のぶゑとシュージの人生バラ色♡』も担当する、あなたののぶゑさん (前列右)

「LGBTやダイバーシティの観点は、今後さらに必要になると思いますし、対クライアントで考えてもメリットがあります。例えばシニア向けの健康食品を販売するECサイトの改善をするとして、若手のデザイナーだけでサイトを作っても、課題に気づけないことが多くあります。多様なクライアントの要望にお応えするためにも、私たち自身の多様性を確保しておくことが重要だと思っています」(森さん)。

エンジニアは、パソコンひとつでどこでもできる仕事と言われもしますが、高いパフォーマンスを発揮するには、エンジニア同士の情報共有や意識のアップデートが大切。それを会社としてしっかりサポートしている、ペンシルの試みでした。

 

[取材を終えて]
2社の話で印象的だったのは、企業としての価値向上や生き残りを考えた時に、多様性の確保はもはや必須であるということでした。個人としての意識の高さが、そのまま企業価値に直結するのが、今の時代。個人の能力向上に企業がすっと寄り添ってくれると、エンジニアはもっともっとその潜在能力を発揮できるのかもしれません。

 

取材・文 : 佐藤 渉
写真:各社提供

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